焦爛の芍薬 最終話 ~自白~
- 2025.01.14
- 小説
~~ 離郷 ~~ ちょうど一年前の、こんな秋のことだった。 この屋敷で誠司の日記帳を探し出し、真希は美由紀と多江と夜中まで色々と会話をした。 真希は最初は謎解きのような気持ちで半分いたが、美由紀と多 […]
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~~ 離郷 ~~ ちょうど一年前の、こんな秋のことだった。 この屋敷で誠司の日記帳を探し出し、真希は美由紀と多江と夜中まで色々と会話をした。 真希は最初は謎解きのような気持ちで半分いたが、美由紀と多 […]
~~ 祖母の観念 ~~ 庭の脇にある深夜の土蔵に三人が集まった。 「多江ちゃん、そんなに怖い顔をして一体どうしたのよ。真希ちゃんまでここで何をしていたの?」 圧倒的な不気味さを放っていたのは、多江より […]
~~ 純粋 ~~ 十九XX年十二月二十七日 『あの聖夜に初恵がつぶやく様に言った。「二十八日には私は大阪へ発つ事になりました」と。その時の表情は果たして誇らしげであったのか暗がりで分からなかった。ただ俺 […]
~~ 切り取られていた祖父の日記 ~~ 一九XX年九月二十日 『初恵からの手紙は未だに開封はしていない。これからの日本の先行きに、世間でも専ら戦争の話題で持ちきりなのもあるが、俺に開封させる勇気がないから […]
~~ 黄昏と巻き鍵 ~~ 真希は二階の自室から、夕暮れ時の庭をボンヤリと眺めていた。 今にも庭木の隙間から初恵がひょっこりと現れるのではないかなどと、幻覚めいた感傷に浸っていた。 気が付けば、すっか […]
~~ 初恵の登場 ~~ 一九XX年五月二十五日 『宗佑さん一家が我が家にやってきた。会うのは何年ぶりであったろうか。宗祐さんは老けたが元気そのものだった。小さかった初恵ちゃんはもう十六才になっていた。初 […]
~~ 月夜の土蔵 ~~ 「日記?おじいちゃんの日記はもうとっくに処分してしまったのよ。あの人からの遺言でね。処分するようにそう書かれていたのよ」 祖母は砂糖もミルクも入っていない食後のエスプレッソを味わい […]
~~ 帰郷 ~~ 真希が神奈川県の北鎌倉にある祖母の家に向かった理由は、いくつかあった。 その内のひとつは、久しぶりに祖母の顔が見たかったから。 真希の両親は、彼女が幼い頃に揃って事故で他界しており […]